クリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は、ECBは「基本シナリオ」と「悪化シナリオ」の中間に位置していると述べた。金融政策は中期を重視しつつ、データは日々点検するとした。
総裁は、ECBは機動的で、データ重視(発表される統計に沿って判断する姿勢)である必要があると指摘した。行動するにはデータが必要だが、必要と判断すればためらわずに動くとも語った。
ラガルド総裁は、2022年のショックは供給要因(モノやサービスを作って届ける側の問題)と需要要因(買い手の強さ)の両方が重なったもので、現在とは状況が異なると説明した。併せて、財政政策(政府の歳出・減税など)を担う当局との対話を求め、分野を絞った的確な措置を取るよう促した。
また、先行きに不透明感(「地平線上の雲」)がある限り、自身は職務を続けると述べた。
金融政策がデータ次第ということは、今後数週間の主要統計の発表前後で相場変動(ボラティリティ)が大きくなりやすい。短期金利先物(将来の短期金利水準を織り込む取引)では、ユーロ圏銀行間金利の指標であるエリボー(Euribor)連動の商品が、インフレや雇用の数字の予想外(サプライズ)に強く反応しやすい。相場が急変しうる局面に備える必要がある。
最新データも、この姿勢が必要な理由を示した。2026年3月のコアインフレ率(エネルギーや食品など変動の大きい品目を除いた物価の基調)は2.7%と高止まりし、目標の2%を上回った。これにより、当面の利下げは不確実となり、金利が高水準で長引くとの見方が強まりやすい。2025年後半にも、インフレ率が想定以上に高い結果が1回出ただけで、利下げ観測が約3カ月先送りされた例があった。
現在は2022年のような供給と需要が同時に崩れた局面とは異なる。足元では、インフレが下がりにくい一方で成長は鈍く、2025年10~12月期(第4四半期)のGDP成長率は0.2%にとどまった。物価抑制と景気後退回避のせめぎ合いは、株価指数(例:ユーロ・ストックス50)のオプション戦略(将来の価格変動に備える権利取引)にとって、上下どちらに大きく動いても利益機会が生まれやすい環境になりやすい。
「雲」という表現は、インフレ見通しが明確になるまで金融引き締め(高金利で需要を抑える政策)が続く可能性を示す。タカ派(引き締めに前向き)発言が出ればユーロ高圧力になり得るため、ユーロ/ドルのオプション価格を注視したい。インプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される市場の予想変動率)は、次回会合前の市場の緊張度を示す指標となる。
財政当局との対話も、国債利回り(国債の金利水準)を左右しうる重要な変数だ。金融政策と財政政策の足並みがそろわない兆しが出れば不確実性が高まり、資金調達コスト(借入金利)が上がる可能性がある。したがって、期間の異なる国債利回り差(イールドカーブのスプレッド)を点検し、ストレスの兆候を探ることが有効となる。