ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁がワシントンで講演する予定で、ほかの理事会メンバーも同日早い時間に発言する。ペルシャ湾岸情勢の不安定さ(価格や相場の振れが大きい状態)が続くなか、当局者は引き締めに前向きな強い姿勢(タカ派:利上げや金融引き締めを重視する姿勢)を維持すると見込まれる。
市場は4月30日の会合について、10bp(ベーシスポイント=0.01%)の引き締めを織り込んでいる。メモでは、緊迫感の薄い発信であれば、今月は据え置き(政策金利を変えない)との見方を後押しし得るとしている。
金利スワップ(将来の金利を交換する取引で、市場の利上げ・利下げ見通しが反映されやすい)の価格には、年内の追加利上げが2回織り込まれている。同メモは、事態の沈静化(緊張が和らぐこと)を示唆する発言は引き締めの可能性を下げるものの、そうした発言は出にくいとの見方を示した。
報告書によると、EUR/USD(ユーロ/米ドル)が1.180を上回って定着(一定期間上回った状態が続くこと)するには、米国とイランの協議の明確な進展が必要とされる。地政学(国際政治・安全保障が相場に与える影響)を、金利見通しと並ぶユーロの重要要因として位置づけた。
2025年のこの時期を振り返ると、ECBはタカ派姿勢を強め、背景にはペルシャ湾岸の不安定さがあった。市場は利上げを積極的に織り込み、4月末の引き締めと年内の追加2回を見込んでいた。こうした環境は、ユーロに特有のリスクと機会を生んだ。
現在は状況が大きく変わり、インフレ圧力の後退に伴ってECBの姿勢は和らいでいる。ユーロ圏のHICP(消費者物価指数の統一指標。国ごとの差をならして比較できる物価指数)インフレ率は2026年3月に2.1%と報告され、目標に近づいた。2025年初の4.5%超から大きく低下しており、引き締め局面は過去のものとなった可能性が高い。トレーダーは利上げ前提のポジション(相場観に基づく建玉)を取りにくい状況だ。
この変化により、オプション戦略(あらかじめ決めた価格で買う・売る権利を使った取引)も見直しが必要になる。EUR/USDの1カ月インプライド・ボラティリティ(予想変動率。オプション価格から逆算される「市場が見込む値動き」)は6.8%前後と落ち着いており、2025年の地政学不安で見られた二桁の急上昇を大きく下回る。その結果、オプション購入コスト(プレミアム=オプション代金)が低下し、上昇に備えるロング・コール(買う権利を買う)やコール・スプレッド(異なる権利行使価格のコールを組み合わせ、コストと利益の範囲を調整する手法)が相対的に使いやすい。
米国・イラン協議の進展が条件とされていた1.1800の重要水準は、2025年後半に交渉が停滞したため、上抜けが定着しなかった。足元のEUR/USDは1.0950近辺で推移しており、通貨高を左右するテーマは「大きな地政学的ブレークスルー」から後退した。代わって、金利差(通貨間の金利の違いが資金流入・流出を左右する要因)や成長指標(景気の強弱を示す統計)が主な材料になっている。