USD/CHFは7日続落し、火曜のアジア時間に0.7830近辺で取引された。背景には、2週間の停戦期限が切れる前に、米国とイランが追加協議を行う可能性があるとの報道がある。
ドナルド・トランプ氏は、イラン側から接触があり交渉再開を望んでいると述べた。JD・バンス氏は、外交努力が続いているとしたうえで、週末の協議はイランの立場を理解するうえで建設的だったと語った。
スイスフラン支援とSNB動向
原油価格が下落したことでスイスフランは下支えされ、スイス国立銀行(SNB)の政策調整の可能性に注目が集まった。スイスの年間消費者物価(CPI=消費者が日常的に購入する商品・サービスの値動きを示す指標)は3月に前年比0.3%へ上昇し、2月の0.1%から加速して1年ぶりの高水準となった。SNBは、スイスフラン(CHF)の過度な上昇を抑えるため、市場介入(為替市場で通貨を売買して相場を動かすこと)を行う可能性を改めて示した。
米ドルも、原油安により米連邦準備制度理事会(FRB)の見通しに関する「タカ派」方向の織り込みが弱まり(タカ派=利下げに慎重で利上げ・高金利維持を重視する姿勢)、上値が重くなった。FRBのスティーブン・ミラン理事は、イランに関連するエネルギー供給の混乱(エネルギーショック)が長期的なインフレ予想(将来の物価上昇見通し)を変えていないと述べ、インフレは1年以内に目標へ戻り得るとの見方を示した。
スコット・ベセント米財務長官はSemaforに対し、利下げの前に「様子を見る」べきだと述べた。最近の物価上昇はインフレ予想に定着しない(人々が恒常的な物価上昇を前提に行動する状態にならない)との見通しも示した。
USD/CHFの下落が続くなか、短期的なスイスフラン高の進行に備える戦略が意識される。具体的には、USD/CHFのプット・オプション(あらかじめ決めた価格で将来売る権利)を買うことで、下落局面での利益機会を狙いつつ、損失を支払ったプレミアム(オプション料)に限定できる。市場が米・イラン合意の確率を高めに見ていることは、安全資産としての米ドル需要(リスク回避局面で買われやすい通貨への需要)を弱めやすい。
リスク管理と市場横断のポジション
ただし、過去に介入が意識されやすかった水準に近づいているため、SNBには警戒が必要だ。2015~2022年にはSNBがスイスフランを強く抑えようとした局面があり、最近の発言からも再び行動する構えがうかがえる。SNBが市場予想を外す対応を取ったり、イラン協議が急に決裂したりして、どちらかに大きく振れる場合に備えるなら、ストラドル(同じ満期・同じ行使価格でコールとプットを同時に買い、上下どちらの大きな変動でも利益を狙う戦略)のようにボラティリティ(価格変動の大きさ)に賭ける方法が検討される。
米国側では、基調的なインフレリスクが軽視されている可能性がある。米コアCPI(食品・エネルギーを除いたCPIで、基調的な物価動向を示しやすい)は2025年の多くの期間で3.5%を超えて推移したため、原油安による安心感が一時的に終わるリスクがある。今後の米経済指標で物価上昇圧力が続くことが示されれば、FRBは再びタカ派に傾き、米ドルが急反発する展開もあり得る。
状況はエネルギー市場とも密接に連動している。緊張緩和で原油価格が下押しされている。合意の見通しは、ホルムズ海峡(世界の石油輸送の要衝)での供給混乱に対するリスク・プレミアム(不確実性への上乗せ分)を低下させる。ホルムズ海峡は世界の石油の約20%が日々通過するとされる。このため、原油先物(将来の受け渡しを約束して売買する取引)での弱気ポジション(価格下落を見込む持ち高)は、USD/CHFのショート(下落を見込んで売る取引)と組み合わせる補完的な取引として意識される。