USD/CADは2日続けて上値が重く、火曜日のアジア時間は1.3790付近で取引された。米国とイランが「2週間の停戦」終了前に追加協議を行う可能性があるとの報道を受け、米ドルが弱含んだ。
米国のドナルド・トランプ大統領は、イラン側から接触があり、交渉再開を望んでいると述べた。JDバンス副大統領は外交努力が続いているとし、週末の協議を「建設的」だとした。
FRBと地政学がドルの重し
米ドルは、米連邦準備制度理事会(FRB:米国の中央銀行)が追加で利上げするとの見方(金融引き締め観測)が後退したことでも軟化した。背景には、停戦が長期化する可能性や、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡(中東産原油の主要な通り道)が再開・安定するとの思惑があり、原油価格が下押しされたことがある。
FRBのスティーブン・ミラン理事は、イラン情勢に伴うエネルギー価格の上振れ(エネルギー・ショック)が、長期のインフレ期待(将来の物価上昇率の見通し)をまだ変えていないと述べた。物価の上昇圧力は1年以内にFRBの目標(通常は2%前後を指す)に戻るとの見通しも示した。
ただし、USD/CADの下落は限定的になり得る。原油安はカナダドルの重しになりやすいからだ。カナダは米国向け最大の原油輸出国であり、供給不安が和らいだとの見方から原油は下落した。
カナダではCBCニュースが、マーク・カーニー首相が月曜日に議会で過半数を確保したと報じた。与党・自由党は、定数343の下院で172議席を獲得した。
戦略は「変動率」重視
米ドルとカナダドルには相反する材料があるため、USD/CADが1.3790前後で足元安定しているのは、市場が方向感を決めかねているサインとみる。今の段階で上げ下げを決め打ちするのはリスクが高く、今後数週間はボラティリティ(価格変動の大きさ)に焦点を当てたい。米・イランの緊張緩和は、同通貨ペアを同時に別方向へ引っ張っている。
原油安はカナダドルにとって大きな逆風で、軽視できない。WTI原油先物(米国の代表的な原油価格の先物取引)は、2025年後半の90ドル超から足元では82ドル前後まで下落した。中東からの供給が安定するとの見方が背景にある。カナダ経済はエネルギー輸出の影響を受けやすく、この価格低下はカナダドル(ルーニー:カナダドルの通称)の上昇余地を抑えやすい。
一方、米ドル安は一時的な可能性もある。市場はFRBが「それほど強く利上げしない」との見方を早めに織り込み過ぎている面があるからだ。3月の米消費者物価指数(CPI:消費者が購入するモノやサービスの価格の動きを示す指標)はインフレ率が3.5%と粘着的で、FRBが急いで利下げ(政策金利の引き下げ)に動く状況とは言いにくい。政策金利の差(米国のFF金利=フェデラルファンド金利が5.5%、カナダ中銀が5.0%)はなお米ドル保有に有利だ。
この環境では、USD/CADはレンジ相場(一定の値幅で上下する展開)になりやすい。方向感の乏しさから利益を狙う戦略として、デリバティブ(株や通貨などを基にした派生商品)取引ではストラングル売り(権利行使価格が異なるコールとプットを同時に売る)やアイアン・コンドル(複数のオプションを組み合わせ、一定レンジ内で利益を狙う)など、プレミアム売り(オプション料を受け取る取引)を検討する余地がある。インプライド・ボラティリティ(IV:オプション価格から逆算される将来の予想変動率)は足元で低下しており、不確実性の高さを映しつつも、プレミアム売り戦略が相対的に魅力的になりやすい。