台湾は2026年に入り、世界的なAI(人工知能)関連輸出への需要と米国の関税圧力の緩和を背景に、高成長と低インフレを維持してきた。ただし2026年4〜6月期(第2四半期)の見通しは、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格の上昇と、輸出の勢いの鈍化で下押し圧力が強まっている。
本レポートは、米国・イスラエル・イランを巡る衝突が、世界のエネルギー市場とサプライチェーン(供給網)の混乱につながっていると指摘。先行指標(景気の先行きを示す統計)は、第2四半期にインフレ(物価上昇)が強まり、輸出が減速する可能性を示しているという。
主要な先行指標
3月のPMI(購買担当者景気指数:企業への調査から景気の強さを測る指数)では、投入コスト(原材料や部品などの仕入れコスト)が急上昇し、2022年のロシア・ウクライナ戦争時以来の水準となった。同じ調査では、輸出受注(海外からの注文)も小幅に減少した。
インフレ見通し(CPI=消費者物価指数:家計が購入するモノやサービスの価格の平均的な動きを示す指標)は1.9%に引き上げられた一方、GDP(国内総生産:国内で生み出された付加価値の合計)成長率見通しは7.0%に据え置かれた。
台湾の「適温相場(景気が強すぎず弱すぎず、物価も安定している状態)」は非常に不安定になっている。最大の材料は中東情勢に起因するエネルギーショック(原油などエネルギー価格の急変)で、足元の市場リスクの中心になっている。北海ブレント原油が1バレル=110ドルを上回ったことを受け、高いエネルギー価格の長期化とインフレ上昇の局面で有利になりやすい戦略が想定される。
具体的には、原油先物(将来の価格で売買する契約)を買う、またはエネルギー関連資産のコールオプション(将来、あらかじめ決めた価格で買う権利)を購入し、追加の値上がりを狙う戦略が考えられる。3月PMIで投入コストが2022年以来の水準となったことは、物価上昇圧力がすでに景気に波及していることを示す。このため、インフレ連動型デリバティブ(物価指数などに連動する金融派生商品)は、CPI上昇に備える手段として注目され得る。
株式の変動拡大と為替への下押し圧力
株式では、輸出への懸念がAI主導の上昇相場の重しになり得る。ハイテク需要を背景に、加権指数(TAIEX:台湾の主要株価指数)は2025年後半から2026年初にかけて最高値圏に達したが、足元では慎重姿勢が求められる。輸出受注の鈍化で調整局面に入る可能性に備え、TAIEXや主要半導体株のプットオプション(将来、あらかじめ決めた価格で売る権利)を買って下落リスクを抑える方法が考えられる。
AI需要の強さと、新たなマクロ逆風(景気全体に影響する要因)がせめぎ合うことで、市場の不確実性が高まっている。TAIEXオプションのインプライド・ボラティリティ(オプション価格が織り込む将来の予想変動率)は過去2週間で5%上昇しており、値動きが大きくなる見通しが示唆される。こうした環境では、ストラドル(同じ権利行使価格でコールとプットを同時に買い、上昇・下落どちらの大きな動きでも利益を狙う戦略)のようなボラティリティ活用型戦略が選択肢となる。
最後に、新台湾ドル(TWD)には下落圧力がかかる可能性がある。輸出の伸び鈍化に加え、米ドルの安全資産志向(リスク回避でドルが買われやすい状況)が強まれば、現行水準からの通貨安につながり得る。今月はTWDが対米ドルで1.5%下落しており、この流れが続く可能性があるとして、USD/TWD先物(米ドル/新台湾ドルの将来の取引価格で売買する契約)で米ドル高に賭ける取引が検討対象となり得る。