米商務省経済分析局(BEA)によると、米国のインフレ率を示す個人消費支出(PCE、家計が実際に購入した商品・サービスの価格動向をまとめた指標)の物価指数は2月、前年同月比で2.8%と横ばいだった。市場予想と一致した。
前月比ではPCE物価指数が0.4%上昇し、予想通り。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE物価指数は前年同月比3.0%と、1月の3.1%から鈍化した。
主なデータと市場の反応
個人所得は前月比0.1%減少した一方、個人消費支出は0.5%増加した。今回の統計公表を受けた市場の反応は限定的だった。
報道時点で、米ドル指数(主要通貨に対するドルの強さを示す指数)は98.96と、前日比でほぼ横ばい。
2025年初めのデータを振り返ると、市場はインフレの着実な低下を見込む姿勢だった。2025年2月の統計でコアPCEが3.0%に鈍化したことは、米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め政策(利上げなどで景気と物価の過熱を抑える政策)が機能しているとの見方を強め、年後半の利下げ観測につながった。
ただ、この安定は一時的だった。エネルギー価格の再上昇と賃金の上振れ圧力が2025年夏にかけて続き、コアPCEは第4四半期に3.4%まで再上昇。インフレ鈍化の流れは崩れ、金利市場では大きな見直し(織り込みの変更)が迫られた。
金融政策と投資ポジションへの示唆
その結果、FRBは利上げ停止にとどまらず、2025年9月に0.25%(25bp、bpは金利の単位で1bp=0.01%)の追加利上げを実施し、緩和局面を見込んでいた市場参加者の不意を突いた。インフレが落ち着いて見えても、根強い上昇圧力は短期間で再燃し得る。FRBはデータを重視し(データ次第で方針を決める姿勢)、早期の「勝利宣言」を避けるとみられる。
今後数週間は、大幅な利下げを見込むより、金利が横ばいか緩やかに上がる前提の戦略が相対的に妥当だ。短期金利先物(将来の短期金利を取引する先物)に反映されるインプライド・ボラティリティ(オプション価格から逆算される予想変動率)は、2025年初に低下していたが、その後も5年平均を上回る高水準が続き、足元は約95となっている。市場参加者は、2026年6月限のSOFR先物(米国の短期金利指標SOFR=担保付き翌日物資金調達金利に連動する先物)でプット(下落時に利益となるオプション)を売る(売り手としてプレミアム=受取料を得る)ことで、高いオプション料と、近い将来の政策金利引き下げが起きにくい点を活用する余地がある。
2025年の統計で見られた「所得が減る一方で消費が増える」という乖離は、貯蓄の取り崩しへの依存を示す初期の警戒サインだった。この流れは続き、全米の個人貯蓄率(可処分所得に対する貯蓄の割合)は2024年末の4.1%から、先月時点で2.7%へ低下し、新たな低水準となっている。消費の持続力は限界に近づいている可能性があり、一般消費財(裁量消費)関連株に連動するデリバティブ(先物・オプションなどの派生商品)は下振れリスクが高まりつつある。