RBCのアナリストは、米国による対カナダ関税の「ショック(予想外の悪影響)」が1年間続いた影響を検証した。カナダのGDP(国内総生産:国全体の生産・所得の規模)と失業率は概ね横ばいで、2025年には1人当たりGDP(GDPを人口で割った豊かさの目安)が3年ぶりに増加した。
春には消費者信頼感(家計の景気見通し)が低下したが、家計支出は底堅かった。純対内直接投資(海外企業がカナダに工場などを作る長期投資から、逆方向を差し引いたもの)は、10年以上ぶりにプラスとなった。
Sector And Regional Divergence
影響は産業と地域に偏って現れ、州ごとの影響は不均一だった。分析は、カナダが米国との貿易(モノやサービスの輸出入)に強く依存している点も示している。
報告書は、貿易の混乱が、生産性(同じ働きでどれだけ多く作れるか)の伸びが遅いといった、より広い弱点を露呈させたと指摘する。これにより、将来の経済ショックを吸収しにくくなる。
また、貿易を米国から他地域へ振り向けるには、新たなサプライチェーン(調達・生産・物流の一連の仕組み)と新しいインフラ(港湾・鉄道などの基盤設備)が必要になるという。財政政策(政府の支出や減税など)も、輸出先の分散を支える手段として重要性が増しているとした。
カナダの最新の連邦予算は、2035年までに「非米国向け輸出」を倍増させることを目標に掲げる。予算には、インフラ支援や大型プロジェクトの手続き簡素化も盛り込まれている。
Positioning For Trade Diversification
昨年の米国の関税ショックが不均一な損失を生んだことを踏まえると、産業間の差を利用する余地がある。2025年の全体の景気は持ちこたえた一方、米国向け貿易への依存が高い産業は依然として苦戦している。このため、TSX60などのカナダ株指数(複数銘柄の値動きをまとめた指標)に幅広く投資する見通しには慎重さが必要だ。
米国依存からの分散を進める政府方針の恩恵を受ける戦略を検討すべきだ。具体的には、太平洋・大西洋の物流拠点の整備に向けて発表された150億カナダドルのインフラ債(インフラ投資の資金調達を目的とする債券)による需要増が見込まれる、カナダの大手鉄道・港湾インフラ企業に対し、コールオプション(将来決めた価格で買う権利)を買う案がある。同時に、米国との貿易摩擦(関税などによる対立)の影響を受けやすい製造業関連ETF(上場投資信託:株のように売買できる投資信託)には、プットオプション(将来決めた価格で売る権利)で下落に備える手もある。2026年2月の最新データでは、製造業の出荷が0.8%減少している。
カナダドルについては、景気が強弱まじりであるため、対米ドルで変動が続きやすい。第1四半期の大半でUSD/CAD(米ドル/カナダドル)が狭いレンジ(一定の値幅)で推移したことを踏まえると、ストラングルの売り(離れた2つの行使価格のコールとプットを同時に売る戦略)で、方向性よりも上下の振れからプレミアム(オプション価格として受け取る代金)を得るのは選択肢となる。通貨は、底堅い国内消費と弱い対外貿易の間で揺れている。
カナダ中銀(Bank of Canada)の姿勢も投資機会になり得る。中銀が重視する課題の一つは、生産性の立ち遅れだ。オーバーナイト・インデックス・スワップ(短期金利の見通しを反映する金利デリバティブ)の織り込みでは、7月までに利下げ(政策金利の引き下げ)の確率が約40%に近い水準となり、景気の弱さを示している。2019年にも、特定産業の弱さが最終的に中銀の対応を促した例があり、金利低下に賭ける先物(将来の金利水準に連動する取引契約)をヘッジ(損失を抑える備え)として組み入れる魅力が増している。