ブレント原油が1バレル=100ドルを上回って取引されているが、足元の市場価格を見る限り、1970年代のような深刻なショック(エネルギー高が長期化し、景気悪化と物価上昇が同時に進む状況)にはつながっていない。市場は、紛争が短期で終わり、先々の原油価格は下がると織り込んでいる。
ブレント先物(将来の受け渡し価格を今決める取引)のカーブは「強いバックワーデーション(期近=近い限月の価格が高く、期先=遠い限月の価格が安い状態)」となっており、6カ月物・12カ月物が現物(スポット)価格を大きく下回っている。この価格構造は、今後数カ月で価格が反落するとの見方を示す。
バックワーデーションは「一時的な上振れ」を示唆
2022年には、6カ月先のブレント先物が1バレル=100ドルを上回り、供給混乱が長引くという見通しが反映されていた。今回は100ドル超でも、先物カーブは当時ほど「高値が続く」形になっていない。
足元では、ブレント原油が1バレル=100ドルを上回っている一方、先物市場は短期の紛争による一時的な上振れだと示している。バックワーデーションのため、将来受け渡しの価格は現物よりかなり低い。例えば、2026年5月限が105ドル近辺で推移する一方、2026年10月限は92ドル近辺で取引されている。
この構造は、今後数週間で「弱気のカレンダースプレッド(限月の違う先物を組み合わせ、価格差の縮小を狙う取引)」を検討しやすいことを示す。具体的には、割高な期近を売り、割安な期先を買うことで、想定通り価格差が縮めば利益が得られる。これは「地政学リスクによる上乗せ分(リスク・プレミアム)が薄れる」という市場の見方に賭ける取引だ。
オプション(将来、決められた価格で買う/売る権利)では、近い満期の「アウト・オブ・ザ・マネー(現時点では権利行使しても得にならない水準)」のコール(買う権利)を組み合わせた「コール・スプレッド(コールを売買して値動きの上限を見込む形)」を売り、プレミアム(受け取る代金)を狙う手がある。価格上昇の余地が限られると見る戦略だ。別案として、夏場に満期を迎えるプット(売る権利)を買い、下落時に利益を狙う方法もある。こちらはコスト(支払うプレミアム)が大きくなりやすいが、先物カーブが示す水準まで下がる場合に直接的に利益を狙える。
スタグフレーション(景気停滞と物価上昇の同時進行)リスクへの影響
2025年時点の視点で振り返ると、2022年は6カ月先のブレント先物も100ドルを上回り、「ショックが長引く」ことが価格に反映されていた。現在のバックワーデーションは大きいものの、当時の記録的な水準ほどではなく、長期の供給不安に対する過度な警戒は小さいことを示す。これらの取引の主なリスクは、市場の見方が外れて紛争が拡大し、先物カーブ全体が上に持ち上がる(あらゆる限月が上昇する)ことだ。