2月のユーロ圏の経済活動と雇用関連の指標は予想をやや下回ったが、過去の水準から大きく外れてはいない。失業率は0.1ポイント上昇し、6.2%となった(「失業率」は、働く意思と能力があるのに職に就けない人の割合)。
ドイツでは、工業部門の雇用者数が前年比2.7%減となった一方、失業率は4.0%で横ばいだった。小売売上高は前月比0.6%減となった(「前月比」は前の月との比較、「前年比」は前年同月との比較)。
France Consumer And Industry Snapshot
フランスでは、財(モノ)の実質消費支出が前月比1.4%減となった(「実質」は物価変動の影響を取り除いた数値)。エネルギーを除くベースでは、第4四半期(10〜12月)と比べて1〜2月の支出は0.2%減だった。
エネルギー支出は2.4%減、衣料品支出は4.0%減となった。背景には、気温が高めだったことや、セール時期のずれがある。鉱工業生産は前月比0.7%減、製造業生産は横ばいだった(「鉱工業生産」は工場などの生産活動の指標)。
1月の製造業データは0.4ポイント下方修正され、第1四半期の持ち越しは小幅なマイナスとなった。フランスの第1四半期の実質GDP成長率見通しは前期比0.1%のままだ(「前期比」は前の四半期との比較)。
スペインの鉱工業生産は木曜日、イタリアは金曜日に発表予定。ユーロ圏の2月小売売上高は水曜日に発表予定で、ドイツとフランスの弱めの結果を受け注目される。
Market Implications And Positioning
ユーロ圏の経済指標は弱さがある一方で底堅さもあり、急激な悪化というより「停滞」に近い局面を示している。直近のS&Pグローバルのユーロ圏製造業PMI(購買担当者景気指数)は、2026年3月に47.1となり、縮小を示す水準だった(PMIは50が景況の分かれ目で、50未満は縮小)。これは、ドイツの工業雇用の弱さとも整合的だ。この環境では、当面の大きな相場上昇は期待しにくい。
成長が鈍いなか、3月のHICP(ユーロ圏の消費者物価指数、各国で基準をそろえた「物価」の指標)インフレ率が2.3%へ落ち着いてきたことで、欧州中央銀行(ECB)は金融緩和寄り(ハト派=利下げに前向き)の姿勢を示している。市場は第3四半期末までに少なくとも1回の利下げを織り込み続ける可能性がある。こうした見通しを踏まえ、Euribor先物などのデリバティブ(金融派生商品。将来の金利水準に連動する取引)で将来金利の低下を見込むポジションを検討する余地がある。
EURO STOXX 50などの株価指数では、景気の勢いが乏しいことから企業利益の上振れ余地は限られそうだ。2025年後半の景気期待が短期間でしぼんだ経緯を踏まえると、今回も相場がレンジ内(一定の範囲)で推移する展開が想定される。低い変動率(ボラティリティ=価格の振れの大きさ)とレンジ相場を前提に、アウト・オブ・ザ・マネー(現状の価格から離れた水準)のコールスプレッド売り(買う権利であるコールオプションを組み合わせ、上昇余地が限られる前提で利益を狙う取引)などを検討したい。
この見通しは為替にも影響し、ユーロには重しになり得る。緩和寄りのECBと、より引き締め寄り(タカ派=利上げに前向き)となり得る米連邦準備制度理事会(FRB)の政策の差は、EUR/USD(ユーロ/米ドル)を下押ししやすい。下振れへの備えとして、ユーロのプットオプション(売る権利。下落時に価値が上がりやすい)を買うことは、ヘッジ(損失を抑えるための取引)として検討に値する。